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就業規則とは?作成・見直しのタイミングや作成の流れを解説します。

スタッフブログ

2025.05.01

就業規則とは…

就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。

職場でのルールを定め、労使双方がそれを守ることで労働者が安心して働くことができ、労使間の無用のトラブルを防ぐことができるので、就業規則の役割は重要です。

ここでは就業規則の作成・見直しのタイミングや作成の流れについて説明します。

就業規則の作成・見直しのタイミング

就業規則の作成義務について

就業規則は、労働基準法第89条により、常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
「常時10人以上」とは、正社員・パート・アルバイトといった雇用形態、勤務時間等は関係なく、あくまで常時10人以上の労働者を使用してれば就業規則の作成・届出義務が生じます。
また、作成・届出義務は「事業場」単位で考えます。
例えば、本社(10人)とは別にA支店(8人)やB支店(5人)という企業がある場合には、それぞれの事業場で「常時10人以上」かどうかを判断します。(企業全体で常時10人以上かどうかを判断するのではありません。)
この場合、本社には作成・届出義務が生じますが、A支店B支店には作成・届出義務は生じません。
しかし、法令上の義務がない場合でも、働く上でのルールである就業規則を作成することが望ましいことは言うまでもありません。

作成・見直しのタイミング

就業規則の見直しは、企業の持続的な成長と従業員の働きやすい環境のために不可欠です。以下に、作成・見直しのタイミングと必要性を示す5つの例を挙げます。

1.法改正があった場合

労働基準法をはじめとする労働関連法規は頻繁に改正されます。これらの改正に対応するため、就業規則の内容を最新の法令に適合させる必要があります。例えば、労働時間、休暇、割増賃金、ハラスメント防止措置などに関する法改正があった場合は、速やかに就業規則を見直し、従業員に周知しなければなりません。法改正への対応を怠ると、従業員との間でトラブルが発生するリスクが高まります。

2.組織体制や事業内容が大きく変更された場合

企業の組織再編、事業の多角化や縮小、新しい事業モデルの導入など、組織体制や事業内容に大きな変更があった場合、既存の就業規則が実態に合わなくなることがあります。例えば、新しい部署の設置、職務内容の変更、勤務体系の変更(リモートワークの導入など)などが該当します。このような変更に合わせて、職務権限、服務規律、人事評価制度、賃金体系などを適切に反映させる必要があります。

3.従業員の増加や働き方の多様化に対応する必要が生じた場合

従業員数が大幅に増加した場合や、多様な働き方(短時間勤務、フレックスタイム制、在宅勤務など)を導入する場合、既存の就業規則では対応しきれないことがあります。例えば、育児や介護と両立しながら働く従業員への配慮、多様な勤務時間制度における労働時間管理、公平な評価制度の構築などが課題となります。多様な働き方を支援し、従業員エンゲージメントを高めるためには、柔軟な対応が求められます。

4.労使間で問題が発生した場合や、従業員からの意見・要望があった場合

労働条件や職場環境に関する労使間のトラブルが発生した場合や、従業員から就業規則に関する意見や改善要望があった場合は、問題解決やより良い職場環境の実現に向けて、就業規則の見直しを検討する必要があります。例えば、賃金制度に対する不満、休暇制度の不明確さ、ハラスメントに関する相談などがきっかけとなることがあります。従業員の声に耳を傾け、建設的な対話を通じて就業規則を改善することは、従業員エンゲージメントの向上や組織の活性化につながります。

5.定期的な見直し時期を迎えた場合

法改正や組織変更などがなくても、社会情勢の変化や従業員の価値観の変化に合わせて、定期的に就業規則を見直すことが望ましいです。一般的には、数年に一度程度の頻度で見直しを行う企業が多いようです。定期的な見直しを通じて、現状の就業規則が企業の経営方針や従業員のニーズに合っているかを確認し、必要に応じて改善を行うことで、時代に合った柔軟な労務管理体制を維持することができます。

就業規則作成の流れ

就業規則に記載する事項

就業規則は企業が定めるルールブックではありますが、就業規則に記載する内容は、必ず記載しなければいけない事項(絶対的必要記載事項)と、定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。

●絶対的必要記載事項
①始業終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
➂退職に関する事項(解雇の事由を含む)

●相対的必要記載事項
①退職手当に関する事項
②臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③食費、作業用品などの負担に関する事項
④安全衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰、制裁に関する事項
⑧その他全労働者に適用される事項

●任意的記載事項
 絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項以外の事項で法的な規制は特にないため、公序良俗に反しない範囲で企業が独自に規定を設けることができます。
例:目的、適用範囲、採用手続きなど

就業規則の効力

前記の記載事項さえ記載すれば、あとは企業が自由にルールを決めれるという事ではありません。
就業規則には法的効力があり、自社で働く従業員の労働条件を規律・変更する効力、労働契約の最低基準を定めるという効力を持っています。
企業の定めた就業規則であったとしても、法令や労働協約に反してはならないと定められています。
では法令、労働協約、就業規則、労働契約の優先順位はどのようになっているのでしょうか。

上図の様に法令が一番強く、順位が上のもので定める基準に反する場合は、無効とされます。
つまり、労働契約で従業員と労働条件について合意していたとしても、その基準が就業規則で定めた基準に達していなければ、その部分については無効となり、就業規則で定められている基準まで引き上げられます。
ただし、就業規則より良い条件の労働契約あれば、その部分については労働契約が適用されます。
例えば、最低賃金法において、時給が1,000円と定められているとします。

これを就業規則で時給900円と定めている場合や、労働契約で時給850円と定めた場合は、どちらも最低賃金法に違反しているため、就業規則も労働契約も賃金部分については無効となり、最低賃金法により定められた時給1,000円が適用されます。

一方、就業規則には時給が1,200円と定めれているが、労働契約において時給1,500円と定めた場合は時給1,500円が適用されます。

就業規則の効力発生要件

就業規則の効力を発生させるためには、以下のポイントを遵守する必要があります。

① 必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」が記載されていること(労働基準法89条)
② 定めた場合には記載する必要のある「相対的必要記載事項」(労働基準法89条)
③ 作成した就業規則を労働者に周知すること(労働基準法106条)
④ 労働者の過半数で組織する労働組合、又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴取すること(労働基準法90条)
⑤ 所轄の労働基準監督署へ届け出ること(労働基準法89条)

①・②については、上記で説明したとおりですが、注意なければならないのは③・④になります。

就業規則の周知方法と過半数代表者

【労働者への周知】
作成した就業規則は、労働者の一人ひとりへの配付、労働者がいつでも見られるように職場の見やすい場所への掲示、備付け、あるいは電子媒体に記録し、それを常時モニター画面等で確認できるようにするといった方法により、労働者に周知しなければなりません。
就業規則の効力発生時期は、就業規則が何らかの方法によって労働者に周知された時期以降で、就業規則に施行期日が定められているときはその日、就業規則に施行期日が定められていないときは、通常は労働者に周知された日と解されています。

一部の従業員だけに周知されている場合や、申し出た従業員にだけ周知している場合、口頭で周知している場合などは周知義務を果たしているとは言えませんので、そのような場合は就業規則自体の効力が認められない可能性がありますので、注意が必要です。

【過半数代表者】
就業規則は、事業主が作成するものですが、労働者の知らない間に、一方的に苛酷な労働条件や服務規律などがその中で定められることのないように、労働基準法では、就業規則を作成し、変更する場合には、労働者の代表の意見を聴かなければならない(労働基準法90条)とされています。

この場合の意見を聴く労働者の代表とは、それぞれの事業場ごとにみて、
(1) 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合
(2) 労働組合がない場合や労働組合があってもその組合員の数が労働者の過半数を占めていない場合には、労働者の過半数を代表する者
をいいます。


前記(2)の「労働者の過半数を代表する者」とは、その事業場の労働者全員の意思に基づいて選出された代表をいいます。過半数を代表する者は、次のいずれにも該当しなければなりません。
(1) 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
(2) 就業規則について労働者を代表して意見書を提出する者を選出することを明らかにしたうえで実施される投票、挙手等の方法による手続きを経て選出された者であること

■選出方法の例
・投票を行い、過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法
・挙手を行い、過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法
・候補者を決めておいて投票とか挙手とか回覧によって信任を求め、過半数の支持を得た者を選出する方法
 当然のことですが、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者であること、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、不利益な取扱いをしてはいけません。

なお、次のような方法は認められませんので、注意が必要です。
・ 使用者が一方的に指名する方法
・ 親睦会の代表者を自動的に労働者代表とする方法


「意見を聴く」とは、文字通り意見を求める意味であって、同意を得るとか協議を行うことまで要求しているものではありません。たとえ反対意見であっても、その旨を記載した意見書を届出る事は可能です。
しかし、労働条件は、労使対等の立場で決定するのが原則ですので、あくまでも一方的に決めようとするのではなく、労働者代表の意見については、できる限り尊重することが望ましいといえます。

提出先・提出書類・期限

提出先は、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署になります。
次の①~③を正副2部(原本+写し)を提出します。

① 就業規則作成(変更)届(令和3年4月1日以降押印廃止)
② 意見書(令和3年4月1日以降押印廃止)
③ 作成(変更)した就業規則
※給与規程や退職金規程など付属規程を作成している場合は、その規程も含みます。
※規程のみを作成(変更)した場合は、規程のみを提出することも可能です。
※就業規則の一部を変更した場合は、新旧対照表のみを作成し届出ることも可能です。

届出期限は、労働基準法において明確な規定はありませんが、原則的には施行日までに届出ることが必要です。万が一、届出を失念していた場合は速やかに届出を行ってください。
作成義務のある事業場が作成していない場合や、作成(変更)しても届出していない場合などは、罰金が科せられる可能性がありますので、早急の対応が必要です。

まとめ

就業規則は、企業の秩序維持と従業員の権利保護のために不可欠なルールブックです。しかし、専門的な知識が求められるため、自社だけで最新の法令や労務管理の動向を踏まえた就業規則を作成・見直すのは困難な場合もあります。
社会保険労務士は、労働関連法規の専門家であり、企業の状況やニーズに合わせた最適な就業規則の作成・見直しをサポートできます。法令遵守はもちろんのこと、従業員が安心して働ける環境づくり、労使間の無用なトラブル防止に貢献します。複雑な手続きや専門的な知識は社会保険労務士に任せて、経営者の皆様には事業の発展に専念していただきたいと思います。
就業規則に関するお悩みは、ぜひ一度、石井社会保険労務士事務所にご相談ください。

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